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23.眠れないのは誰のせい?①

Author: 鷹槻れん
last update Last Updated: 2025-07-22 00:00:00

「さて花々里《かがり》。謝罪の代わりに、僕からキミに何らかの要求を突き付けても構わないよね?」

簀巻《すま》きにされた――実際には自分でやったんだけど――状態のまま、何とか彼の手中から逃れようとクネクネと悶える私に、頼綱《よりつな》がこれ以上ないくらいににっこりと微笑みかけてきた。

ひぃー!

その笑顔、「僕」口調でされるとめちゃくちゃ怖いですっ!!

「な、な、な、何をっ」

私は今からご主人様にどんなひどい折檻をされるのでしょうか!?

不測の事態に備えて何とか手だけでも出したいのに、頼綱はそれを許さないみたいに、毛布ごと私の身体をぎゅっと抱きしめてきて。

それはまるで「逃がさないよ?」と圧を掛けられているようで、ますます怖い。

「ねぇ花々里。うちに居候しているとか、俺に雇われている身だとか、そういうのを全て抜きにして正直に答えて欲しいんだけど」

いいね?と視線だけで念押しされて、私は蛇に睨まれた蛙みたいに射すくめられてしまう。

頼綱、何てかっこいいんだろう。

オールバックでバッチリ髪の毛を整えている頼綱も隙がなくて見栄えがするけれど、今みたいに無造作に下ろし髪にしている彼は堪らなく色気があって素敵だ。

そんな整った顔で、前髪越し、真剣に私の顔を見つめてくるなんて……ずるい。

私、その目には逆らえそうにないよ。

観念したように小さくうなずくと、途端、頼綱が何故か緊張したように居住まいを正した。

「頼、綱……?」

その様子にこちらまで気持ちが張り詰めてくるようで。

恐る恐る彼の名前を呼んで、頼綱を不安いっぱいになりながら見上げたら、彼はそんな私をじっと見下ろしてきて。

いつもより更に低い
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    そんな気持ちを込めて頼綱《よりつな》を見上げたら「逃がさないよ?」って顔に書いてあって。 私は仕方なく打開案を提示する。 「あ、あの……。さっ、寒いからお布団にくるまってお話聞いてもいい?」 初夏に寒いとかバカなことを言っているのは百も承知です。 でも、どうか今だけは見逃してください、お願いしますっ。 恐る恐る頼綱を見上げる私に、彼は一瞬驚いた顔をしてから、「どうぞ」と言ってくれた。 私はお言葉に甘えて頼綱の香りがするドキドキの毛布をゆるゆると身体に巻きつけて、ソワソワしながらもホッとする。 「そんなにくるまらなきゃいけないほど寒いのかね? まさか……悪寒がしてるとかじゃないよね?」 その様を見て、頼綱が心配そうに眉根を寄せておでこに触れてこようとする。 私は慌ててのけぞって、布団にくるまったまま、またしてもベッドに倒れ込んでしまった。 ただし、今度は仰向けに――。 「花々里《かがり》、キミはさっきから何をしているの?」 途端頼綱にクスクス笑われてしまって、私はぷうっと唇をとがらせた。 「そんなに笑わなくてもいいじゃない」 小さく文句を言いながら起きあがろうとして、巻きつけた布団のせいで手が出せなくてモタモタしてしまう。 きっと今の私、さながらベッドに転がったイモ虫だ。 と――。 「ひゃあっ」 結局見かねた頼綱にぐるぐる巻きのまま抱き上げられてしまった私は、そのまま彼の膝の上に横抱きに抱き抱えられてしまう。 「あ、あのっ」 手も足も出ないとはまさに今の私の状態を言うんだと思

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     頼綱《よりつな》は私の手をグイグイ引っ張りながら、「ここが風呂場」、「ここが花々里《かがり》の部屋」とアナウンスをしてくれて。 私の部屋から本当に目と鼻の先――十数歩程度の距離――の自室に着くなり「そしてここが俺の部屋」と言って私を振り返ると、「この距離で迷子になれたの、不思議だと思わない?」って聞いてくるの。 本当、頼綱の部屋、ぐうの音も出ないほどすぐそこで……。 きっと考え事をしていたからだとは思うけれど、この距離で迷子になったと思うと、さすがに私も何にも言い返せませんでした。***「さて、じゃあ足の手当てから始めようか」 言われて、寝床を指さされた私はソワソワと視線を彷徨わせる。「あ、あの、私、あっちの椅子でもよろしくってよ?」 部屋の片隅に机と椅子を発見した私は、そっちでいいよ?と頼綱を見つめた。 緊張のあまりどこのお嬢様ですか!?みたいな言葉選びをしてしまったことにさえも、頓着していられないくらい気持ちがざわついてるの。 ほら、だって、車でも椅子の上に膝立ちだったのよ? だから頼綱の部屋でもそれで大丈夫だと思うの。 ご主人様のベッドに近づくだなんて、滅相もございません! 頼綱の返事を待たずにいそいそと椅子の方へ行こうとしたら、ギュッと手を掴まれてそのまま有無を言わせずベッドに座らされてしまった。 ひー! ベッド怖ぁーい!「車の中ではシートに座るしか無かっただけだろう? 何故広い部屋でわざわざそんな窮屈なポーズを取る必要がある?」 ズイッと顔を近づけられた私は、慌てて顔を背けた。 髪を下ろしたその姿、見慣れてないんですってばぁーっ!「それにあの椅子は回転椅子だ。花々里のことだから何かするたびにくるくる回りそうで嫌なんだがね?」 私の緊張なんてお構いなし。 頼綱がズンズン近づいてくるから私はどんどんの

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    ちょっとそれを着た頼綱《よりつな》を想像してしまって、似合わなさ加減に吹き出しそうになった。 *** 頼綱は明日も8時には病院にたどり着いていないといけない。 そうなると起きるのは6時前後になるはずだ。 少しでも早く休んでもらわないと、体調を崩してしまうかも。 今までは「自分で管理するでしょ?」と、頼綱の健康管理なんて気にも留めていなかったのに、彼のことを意識し始めた途端、そんな些細な事まで気になってしまって。 自分は自覚しているよりももっと深く頼綱のことを好きになってしまっているのかも知れない。 ふぅっと小さく吐息をつくと、私は頼綱に言われたようにスマホを忘れず手にして自室を後にした。 *** ――のはいいけれどっ。 頼綱の部屋、どこっ!? 私の部屋とそんなに離れた位置にはなかったはずなのに、頼綱の部屋が消えてしまった。 これはきっと緊張のせいに違いないっ。 ぺたぺたと素足で板張りの廊下を歩きながら、スリッパ履き忘れてきちゃった……とかどうでもいいことを思ってしまう。 と、手の中のスマートフォンが急に鳴り始めて、私はビクッとしてしまった。 見ると、ちゃんと頼綱からの着信って分かって、前の携帯から電話帳がきちんと引き継げているのが実感出来てホッとする。 「もしもし?」 恐る恐る出たら、「あまりにも遅いんで、もしかして迷子になっていたりしてないかと思ってね」とまるで見てきたみたいなお言葉が。 迷子ではなくて……そちらのお部屋が消えたのですっ。 なんてバカなこと、言えるわけもなく。

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     八千代さぁーん、家中に甘い匂いが満ち溢れてますけど、作ったお菓子は何ですかぁー!? それ、私も食べられますか!?***「花々里《かがり》、風呂から上がったら俺の部屋へおいで」 風呂上がりの、スーツ姿の時とは違ういい匂い――石鹸の香り――を漂わせた頼綱《よりつな》が、私の部屋をノックして顔を見せるなりそう言った。 入浴後で下ろし髪になっている頼綱は、オールバックの時より少し若く見える気がする。「おへっ!?」 お部屋に!?が最後まで言えなくて変な言葉になってしまった私に、「よもや忘れたとは言わせないよ? 絆創膏を貼る約束、したよね?」と声を低められてしまった。 ああ、そうでした! もぉ、紛らわしい言い方するから、てっきり添い寝しろとか言い出すんじゃないかと勘繰って、変にドキドキしちゃいましたよ!?「了解です!」  絆創膏問題に関しては、私も鳥飼さんに処置をしてもらったと言う負い目があるから素直に従うしかない。 それにこれ、断ると頼綱の機嫌を著しく損ねることが分かっていたから、努めて従順に振る舞って、分かりやすく敬礼してみたり。 それを見て表情を和らげた頼綱が、先程のどこか怒りを含んだ声音とは違った、少し悪戯っぽい表情でニヤリとした。「――それにね、実は俺、花々里にひとつ聞きたいことがあるんだ。スマホを忘れずに持っておいでね?」 意味深に言われて、怪しい光を灯した瞳で見つめられた私の心臓はバクバクだ。「なっ、何でしょう!?」 もったいつけずに今、話してもらえませんか!? ソワソワとそんな気持ちを込めて頼綱を見上げたら、「気になるかね?」と微笑されて。 もちろん!と言う意思表示でうんうん!と首を縦に振ったら、意地悪く目を細められる。「だったら早く風呂を済ませて俺の部屋にくるこ

  • そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜   22.わーん、ごめんなさいっ!④

    と、玄関まであと少し、というところで、 「花々里《かがり》……、甘くていい匂いがするね」 どこかうっとりとした声音で頼綱《よりつな》からそう言われて……「ん? 何が?」と思う。 でも、彼の言葉に鼻をヒクヒクさせてみれば、家の方から甘い香りがしてくるのに気が付いて、「八千代さん、お菓子作ったのかなっ?」って思わず声を弾ませた。 にっこり笑って「プリンかなっ? カラメルソースみたいな匂いがするよね!?」ってワクワクしながら頼綱を見上げたら、頼綱ってば「いや、俺が言ったのは花々里の……」と、何かを言いかけるの。 その言葉に「ん? 私の?」って小首を傾げたら、「いや、いい」ってやめちゃって。 変な頼綱。 さては私より先に美味しい匂いに気付いたのが恥ずかしかったのかな? もう、可愛い所があるんだからっ! 頼綱はそんなに筋肉質には見えないのに、やはり男性だ。 私を抱く二の腕にも、身体を預けた胸板からも、着痩せするけれどしっかりと付いた筋肉の存在を感じさせられて。 甘い香りに負けないくらいの頼綱のいい匂いに包まれて、私はソワソワしたまま玄関をくぐった。 玄関先で頼綱から降ろされた私は、そのままひんやりと足触りのいい床の上で頼綱からパンプスを受け取った。 頼綱と離れたことが残念なような、ホッとしたような……。何とも複雑な気持ちに包まれて、呆けてしまう。 そんな折、いつの間にか出迎えてくださっていたらしい八千代さんに、背後からいきなり「お帰りなさいませ」と声を掛けられて、思わずビクッとなってしまった。 「お風呂の支度は出来ておりますので」 ひゃわわっ。 もしかして、頼綱に抱っこされてたの、見られたりしましたかっ!?

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